長期金利(10年国債利回り)が30年ぶりに3%を超えました。1990年代半ば以来の水準です。そして今、話題になっているのは「現金・預金だけに置いておく人ほど、じわじわ損をしかねない」という構造変化。これは投資をしていない人にも関係する話なので、落ち着いて整理していきましょう。

出典は東洋経済オンライン「『30年ぶり長期金利3%超え』でも環境は当時と大違い!」(toyokeizai.net)です。

「同じ3%」でも30年前とは中身が違う

ここが今日いちばんお伝えしたい点です。1990年代半ばの金利3%は「これから下がっていく途中の3%」でした。バブル崩壊後、金利は長い下り坂の入り口にあった。一方、今の3%は「長く続いたゼロ金利・マイナス金利からの上り坂で到達した3%」です。

同じ数字でも、下り坂の3%と上り坂の3%では意味が正反対だと私は見ています。前者は「これから預金金利は下がるから今のうちに固定」が正解でしたが、後者は「これからさらに上がるかもしれない」という前提で考える局面です。

もう一つ大きな違いが物価です。90年代はデフレの入り口でしたが、今は物価が上がる時代。ここに落とし穴があります。

「実質金利」というものさしで見る

へえ、と思っていただきたい豆知識を一つ。金利には「名目」と「実質」があります。実質金利とは、ざっくり言えば「金利-物価上昇率」です。

たとえば預金金利が0.5%でも、物価が3%上がっていれば、お金の実質的な価値は年2.5%目減りしている計算になります。通帳の数字は減っていないのに、買えるモノは減っている。これが「静かに失われるお金」の正体です。

つまり「預金は元本が減らないから安全」という感覚は、物価が上がる時代には半分しか正しくない。金利が3%まで戻ってきたことは、預金者にとっては朗報でもありますが、同時に物価も動いているので、油断すると差し引きマイナスになりかねないのです。

振り分けの考え方は「役割分担」

具体的な銘柄や商品の推奨はしませんが、考え方の枠組みだけ整理します。私はよく資産を「航海の装備」にたとえます。

  • 預金は救命胴衣。すぐ使うお金・生活防衛資金。増えなくてもいい、いつでも取り出せることが役割。
  • 個人向け国債などは羅針盤付きの錨。金利上昇局面では変動金利型が意識されやすく、安全性を保ちつつ金利の恩恵を受けたい部分。
  • 株式は帆。長期的に物価上昇を上回るリターンを狙う攻めの部分。ただし波(値動き)は大きい。

大事なのは「どれが正解か」ではなく「自分の航海期間(使う時期)に合わせて配分する」こと。3年以内に使うお金を帆に載せるのは、嵐が来たとき困ります。

先日、AIの台頭でブルーカラーの働き方が変わるという記事に触れましたが、収入源の変化と資産の置き場所は本来セットで考えるべきテーマです。稼ぎ方が変わる時代は、貯め方・守り方も見直しどきだと感じています。

金利が動く局面は、めったに来ない「装備の点検日」。慌てて動くのではなく、自分の配分を見直すきっかけにするのが賢明だと私は考えています。