4日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が荒い値動きを見せました。米雇用統計で堅調さが示されると円売り・ドル買いが進み、その後一転して円が買い戻される展開に。方向感の定まらない、まさに凪と突風が交互に来る海のような一日でした。

なぜこれが読者に関係するのか。円相場は輸入物価を通じて私たちの生活コストに直結し、株式相場の追い風にも逆風にもなるからです。今日は「なぜこんなに揺れるのか」を整理します。 (出典: NHKニュース(経済) https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260905de48256)

三つの力が綱引きしている

今の円相場は、大きく三つの力がせめぎ合っています。一つ目はFRB(米連邦準備制度)の利下げ観測。景気指標が強ければ「利下げは遠のく」と見てドル買い、弱ければドル売りに振れます。二つ目は日銀の利上げ観測。日本側が金利を上げるとの見方が強まれば円買い要因です。三つ目が政府・日銀による為替介入への警戒感。

面白いのは、この三つが同時に別々の材料に反応するため、一日のうちに売りと買いが交錯することです。雇用統計で一度ドル高に振れた後すぐ巻き戻されたのは、市場が「強い指標」と「介入・利上げリスク」を天秤にかけている証拠だと私は見ています。単なる乱高下ではなく、方向を決めかねている「様子見の揺れ」なのです。

へえ、と思う介入の歴史

ここで豆知識を一つ。為替介入の原資は「外国為替資金特別会計(外為特会)」という国の別会計で、その規模は100兆円を優に超えます。そして意外に知られていないのが、円売り介入(円高を抑える介入)では、買ったドルを米国債などで運用するため、長期的にはむしろ利益(運用益)を生んできたという点です。「介入=税金の無駄遣い」というイメージとは少し違うわけですね。

ただし今回警戒されているのは円安を止める「円買い介入」の方。こちらは手持ちのドルを売る必要があり、弾数(=外貨準備)に限りがあります。だからこそ市場は「どの水準で、どれだけの規模で来るか」を神経質に見張っているのです。介入は効き目が一過性になりやすく、根本の金利差が変わらなければ流れは戻りやすい——これは歴史が繰り返し示してきたことです。

慎重派としての読み方

先日まで私は「AIとブルーカラー」の労働市場の話を書いていましたが、実は為替も労働市場と無縁ではありません。米雇用統計が為替を動かすのは、雇用の強弱がFRBの利下げペースを左右するから。働き方の構造変化を追うことと、雇用統計で為替が揺れることは、地続きのテーマなのです。

短期の上下に一喜一憂するより、金利差という「潮の満ち引き」の本流を見ることをおすすめします。突風(介入や指標)で波は立ちますが、潮の向きを決めるのは日米の金融政策の方向性です。当面はこの綱引きが続き、レンジ内で荒い値動きが繰り返される、というのが私の基本シナリオです。