中国のメモリー半導体大手・長鑫科技(CXMT)が上場直後から株価を急伸させ、時価総額が一時90兆円を超えて中国株式市場でトップに立ったと報じられました。AI投資ブームが追い風です。

なぜ私たち日本の投資家にも関係があるのか。メモリー半導体は日本・韓国・台湾・米国が主役だった市場で、そこに中国の新たな巨人が現れたからです。供給地図が塗り替わるかもしれません。

何が起きたのか

東洋経済オンラインの報道(記事リンク)によれば、CXMTは上場直後の驚異的な株価上昇で、時価総額において中国トップ企業へと躍進しました。背景にあるのはAI向け半導体需要の急拡大です。

AIの学習・推論には大量の高速メモリーが欠かせません。とくに生成AIの普及で、データを一時的に蓄えるDRAM(動的記憶メモリー)への需要が世界的に逼迫しています。CXMTはその国産化を担う存在として、期待を一身に集めているわけです。

ただ、私はこの数字を額面通りには受け取っていません。時価総額90兆円という規模は、いわば「まだ実らぬ果実に、豊作の値札をつけた」状態に近いと見ています。期待が先行する相場では、株価は企業の実力よりも「物語」で動きがちだからです。

期待の裏にある構造変化

ここで一つ、へえと思っていただきたい豆知識を。メモリー半導体の世界は「シリコンサイクル」と呼ばれる好不況の波が、およそ数年周期で繰り返されてきました。値上がりで各社が増産すると供給過剰になり、価格が暴落する——この循環を業界は何度も経験しています。1990年代に世界を席巻した日本のDRAMメーカーが、その後この波にのまれて次々撤退したのは有名な歴史です。

つまり、今のAI需要による活況も、いつか供給が需要を追い越せば調整局面が来る可能性があります。CXMTの評価が「サイクルのどこに位置しているか」を冷静に見極めることが、熱狂に飲まれないコツだと私は考えています。

昨日までブルーカラー就活とAIの話題に触れてきましたが、AIという同じ潮流が、労働市場だけでなく半導体という「AIの土台」にも巨大な資金を呼び込んでいる。この構造の連続性は覚えておきたいところです。

汐里の視点

中国が自国のメモリー産業を国策として育てるのは自然な流れで、地政学的リスクを背景に「国産化」の動きは今後も続くでしょう。長期の構造変化としては本物だと思います。

一方で、上場直後の急騰は往々にして期待の前借りです。航海にたとえれば、追い風は確かに吹いていますが、風が強すぎる時ほど帆を張りすぎない慎重さが要る。特定銘柄の売買を勧めることはしませんが、材料として「AIメモリー需要」と「シリコンサイクルの転換点」は今後も意識されそうです。