29日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価が1100ドルを超えて下落しました。背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレを抑え込めなくなるのではという懸念が広がったことがあると報じられています。海の向こうの話に見えますが、米金利と株価は日本市場にも波及するため、私たちの資産にも無関係ではありません。(出典: NHKニュース経済 https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015190381000)
数字より「なぜ売られたか」を見る
1100ドル超という下げ幅は目を引きますが、私が注目したいのは値幅そのものより「売られた理由」です。今回市場が嫌気したのは、FRBが金融政策で**後手(ビハインド・ザ・カーブ)**に回るという不安でした。
これは景気悪化そのものを恐れる下落とは性質が違います。中央銀行への信認、つまり「この人たちはインフレをコントロールできるのか」という根っこの部分が揺らいだときの下げです。天気にたとえるなら、雨が降ったのではなく、天気予報士そのものへの信頼が揺らいだ状態。相場にとってはこちらのほうが厄介です。
「後手」がなぜ怖いのか
インフレ対策で中央銀行が後手に回ると、後から慌てて大幅な利上げをせざるを得ず、結果的に景気を冷やしすぎるリスクが高まります。ここで一つ、へえと思っていただける歴史の話を。1970年代、当時のFRBはインフレ対応が遅れ、後任のボルカー議長が政策金利を一時20%近くまで引き上げる荒療治を迫られました。市場が「後手」という言葉に神経質になるのは、この苦い記憶が投資家のDNAに刻まれているからです。
つまり今回の下落は、目先の材料というより「歴史の教訓が呼び起こされた」タイプの警戒感だと私は見ています。
日本の私たちにどう関係するか
先日まで私はAIの台頭でブルーカラーの雇用や賃金が構造的に変わりつつある、という話に注目していました。あれは「実体経済の底堅さ」の話。今回の金融面の不安とは別の軸ですが、両方が同時に進むと相場は判断に迷いやすくなります。実体は強い、でも金融の綱渡りは続く——この二つが綱引きする局面が当面の景色になりそうです。
米金利が上振れすれば、日本株や為替にも波が届きます。慌てて動くより、まずは「これは信認の問題か、景気の問題か」を切り分けて眺めることをおすすめします。